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2024/06/25
顎変形症の手術とは?失敗しないための対策や保険適用できるかを紹介します
目次
「顎変形症(がくへんけいしょう)」とは、顔の歪みや顎のしゃくれ、時には精神的なストレスも生じさせうる口元の状態のことを指します。
顎変形症の治療は歯科矯正装置だけで行える場合もありますが、症状の度合いによっては外科手術が必要になります。
この記事では、「顎変形症の主な症状」「顎関節症との違い」「外科手術が必要になるケース」「治療方法と流れ」「保険適応の有無」を紹介します。
併せて「顎変形症の治療で失敗しないための対策」も説明するので、ぜひ最後までチェックしてみてください!
顎変形症(がくへんけいしょう)とは
「顔の歪みが気になる」
「顎がしゃくれている」
「噛み合わせに違和感がある」
これらの状態が気になっている人は、顎変形症の可能性が考えられます。
一般的に顎変形症は顎の骨の異常により起こるといわれていますが、どのような特徴があるのでしょうか。
ここからは、具体的に「顎変形症についての詳しい説明」と「顎関節症との違い」を紹介します。
顎変形症とは|主な特徴や症状を紹介
顎変形症は、上下それぞれの顎の骨がずれている状態のことを指します。
顎変形症は単なる歯並びの乱れだけではなく、顎の骨などの骨格的要因が元になって起こる症状ともいわれています。
特に、上下・左右・前後など様々な方向にずれが激しい人や、歯科矯正治療のみでは改善が難しそうな人は顎変形症と診断されるケースが多いです。
顎変形症には上顎前突症(例、鳥貌)、下顎前突症(受け口、しゃくれ)や上下顎骨偏位(上下のあごの左右のずれ)などがあります。このような症状は矯正歯科治療単独では、改善する事が出来ないため、外科手術を併用して骨格と咬み合わせの改善を行います。これを外科的矯正治療といいます。
引用元:きづがわ矯正歯科
ずれが激しく歯科矯正装置のみでの治療が難しいと判断された場合は、外科手術を伴った治療を行うケースもあります。
顎変形症になると、以下のような症状が現れやすいといわれています。
- 食べ物が噛みづらい
- 言葉の発音が変になる
- 唇が閉じない
- 顔の形が変わる
- 精神的なストレスが生じる
口元の機能的な不具合だけでなく、精神的なストレスを及ぼす可能性もあるのが特徴です。
「顎変形症」と「顎関節症」は違う疾患
「顎変形症」と「顎関節症」はよく似た名前ですが、異なる疾患です。
顎変形症は顎の骨や骨格のズレが主な原因となり、噛み合わせの不具合や顔の歪みなどを生じさせるといわれています。
顎変形症とは、「あごを形成する骨の大きさ・形・位置に問題が起きている状態」のことです。具体的には、「上あごと下あごの大きさが違う」「骨格がズレている」などが挙げられます。
あごの骨に異常があると、噛み合わせが悪くなるほか、顔面の形態異常を引き起こします。
引用元:ミライズ矯正歯科 南青山
顎関節症は、顎の関節・顎の周辺筋肉の異常が主な原因となり、
- 口が開けづらい
- 顎を動かすと音がする
- 顎が痛い
などの症状を引き起こすといわれています。
あごが思い通りに動かず、食べ物が噛みにくい。あごを動かすと不快な音がする。痛みを感じて口が開かない。さらに症状は顎ばかりでなく、肩こりとか、腕や指のしびれ、偏頭痛、耳や鼻にも不快感を覚えることもあります。
加えて顎関節症は、顎や口元だけでなく
- 肩が凝る
- 腕や指が痺れる
- 偏頭痛が起きる
などの症状を引き起こすケースもあります。
顎変形症の治療方法と保険適応について
ここからは、顎変形症の主な治療方法2種類と費用の目安、保険適応の可否についても説明します。
歯科医院で顎変形症の可能性があると診断された人・顎変形症治療を検討している人はぜひチェックしてみてください。
顎変形症治療は主に2種類
顎変形症治療は、主に「歯科矯正治療だけで行うパターン」と「歯科矯正治療と外科手術を組み合わせて治療するパターン」の2つに分けられます。
もともとの歯並びの状態やなりたい仕上がりなどを確認した上で、どれくらい歯を動かすか・外科手術を用いて骨格から治療する必要があるかなどを総合的に判断し、治療方法を決定します。
形成外科医、矯正歯科医、言語聴覚士や耳鼻咽喉科医と相談の上で治療法を決定します。治療の目的は咬み合わせと顔貌の両者を改善することにあります。したがって、どの位置にあごを移動すれば、最も良い咬み合わせと顔貌が得られるかを検討します。歯列矯正単独での改善が難しい場合には、骨切り術というあごの骨を切る手術をあわせて行います。多くの場合は手術前後に矯正歯科での歯並びの治療を行うことが勧められています。
引用元:一般社団法人 日本形成外科学会
治療方針の決定には、歯科医師だけでなく形成外科医や耳鼻咽喉科の医師など複数の医師が関わるケースもあり、慎重に判断されます。
なお、顎の変形が軽度の場合は歯科矯正装置だけで治療を行うケースが多いとされています。
歯科矯正装置のみでは噛み合わせや歯並びが整わないと判断された場合は、外科手術を併せた治療の検討が必要になります。
顎変形症治療の流れと目安期間
ここからは、外科手術と歯科矯正治療を組み合わせた場合の治療の流れと目安期間を紹介します。
■STEP1:診察・精密検査・診断
治療を開始する前に、顎の骨の状態を詳しく確認するために写真撮影やレントゲン撮影などを行います。
クリニックによってはCT撮影や口腔機能検査・歯型模型の作成なども併せて行い、口元の状態を把握した上でこれからの治療計画を決定します。
■STEP2:術前歯科矯正治療(1〜3年程度)
外科手術の前に術前歯科矯正治療を行い、あらかじめ歯並びを整えておきます。
術前歯科矯正治療は外科手術の負担を少なくするため、また術後に噛みやすくするために必要な過程とされています。
術前歯科矯正治療の期間は元々の歯並びや体質にもよりますが、1〜3年が目安です。
■STEP3:外科手術(2〜4週間程度)
術前歯科矯正治療が終了した後、口腔外科や形成外科に入院し顎の外科手術を行います。
一般的に、外科手術では全身麻酔を使用します。
手術の前にレントゲン検査や写真撮影、また必要に応じて内科検査などを行うため、手術予定日の3日程度前から入院する場合が多いです。
手術から約2〜4週間後、経過を見て問題がなければ退院となります。
■STEP4:術後歯科矯正治療(半年〜1年程度)
手術後には、噛み合わせの微調整のため・歯を正しい位置に固定するために、再度歯科矯正治療を行います。
■STEP5:経過観察・保定
治療が終わった後もしばらくは歯科医院や手術を受けた病院に通院し、経過観察を行います。
また、一般的な歯科矯正治療と同様に、保定装置を使って治療した歯の後戻りを予防します。
治療費は保険が適応になる場合もある
顎変形症治療で保険が適応になるといわれている主なパターンは以下です。
- 重度の顎変形症と診断される
- 顎変形症による噛み合わせの異常がある
- 外科手術を伴う顎変形症治療を行う
- 「顎口腔機能診断施設」で治療を受ける
なお、軽度の顎変形症と診断され、外科手術を行わない場合は保険が適用にならないため、注意が必要です。
顎変形症と診断されても、外科手術をしないで矯正治療だけ行う場合は、保険が適用されません。
健康保険の適用になるのは、保険顎口腔機能診断施設に指定されている医療機関で「顎変形症」の診断が出て、外科手術を伴う矯正治療をした場合です。
しかし自分では軽度だと判断していても、検査を受けたら手術が必要だと診断される可能性もあります。まずは信頼のおける矯正歯科に相談してみましょう。
引用元:アリビオ矯正歯科クリニック
保険適応の可否には個人差があるので、詳しく知りたい人は顎変形症治療を行っている歯科医院で相談してみてください。
顎変形症手術が失敗した時の症状は?
顎変形症治療で外科手術を行った人が「失敗した」と思う症状・ポイントは以下が挙げられます。
- 治療後の顔の変化が想像と違った
- 外科手術後のダウンタイムが辛かった
- 外科手術後の口元の感覚麻痺・しびれが長引いた
- 術前・術後の歯科矯正期間が思った以上に長引いた
- 噛み合わせ違和感がある
- 出っ歯になった
- 顔のバランスが左右非対称に感じる
- 滑舌が悪くなった
- 鼻の形が変わった
- 一時的に口が開きにくくなった
- 一時的に顔が腫れた
顎矯正手術は、上顎骨、下顎骨、またはその両方を動かす手術です。顔面骨の中央と下方が変化するわけですから「顔が変わる」ことは絶対に避けられません。顔を変えたくないという方は、通常の歯科矯正治療をお考えください。特に上顎の手術では、鼻の形が変わることもご承知ください。
引用元:洛和会音羽病院
顎変形症治療の外科手術では、目に見えた歯並びだけでなく、顔の骨格そのものにアプローチします。
そのため、顔の形や印象の変化は避けられないともいわれています。
顎矯正手術はほとんどの場合、全身状態が健康な状態で行われますので、外科手術の中では比較的リスクの少ない手術と考えられます。しかし、外科手術ですので担当医からリスクについて十分な説明を受け、ご自身がよく理解することが大切です。顎外科手術の術後に問題となるのは、顔(口唇やあごや頬など)に麻痺や知覚鈍麻、腫れが出ることです。麻痺や知覚が鈍くなった状態は徐々に緩和されますが、半年から数年続くこともあります。顔の腫れは、術後1ヵ月が経つ頃にはほとんど解消されてきます。
引用元:尾崎矯正歯科クリニック
治療後の違和感の多くは時間の経過とともに落ち着くと言われていますが、気になる場合や強い違和感がある場合は、歯科医院や手術を受けた医療機関に相談してみてください。
顎変形症手術での失敗を避けるために
外科手術を伴う顎変形症治療を受ける際に気をつけたいポイントを紹介します。
「失敗した…」「治療を受けて後悔した…」ということを避け、理想の仕上がりに近づけるるためにも、ぜひチェックしてみてください。
顎変形症手術で失敗しないためのポイント|①複数の歯科医院を比較検討する
顎変形症手術で失敗しないためのポイントの1つ目は「複数の歯科医院を比較検討する」です。
厚生労働省の調べによると、2023年現在の全国の歯科診療所は約6万7,000件を超えるといわれており、これは全国のコンビニよりも多い数となっています。
歯科医院によって特徴や症例数、専門性、特化しているポイント、在籍している医師の雰囲気が異なりますので、いくつかの病院で診察を受け自分にぴったりの歯科医院を選びましょう。
なお、外科手術を伴う顎変形症の治療は数年単位で行われるため、医師との相性も重要なポイントです。
失敗して後悔しないためにも様々な歯科医院を比較検討し、焦らずじっくり選びましょう。
顎変形症手術で失敗しないためのポイント|②事前に治療後の顔のイメージを確認する
顎変形症手術で失敗しないためのポイントの2つ目は「事前に治療後の顔全体のイメージを確認する」です。
顎変形症手術で失敗したと思う理由の一つは、思い描いていた仕上がりと治療後の実際の姿にギャップがあることです。
顎変形症治療の手術では、顎の骨の動きによってはイメージしていた仕上がりと異なってしまう場合や、大きく顔の印象が変化する可能性があります。
できる限り、なりたいイメージと実際の仕上がりのギャップを少なくするためにも、治療を始める前に医師と患者でしっかり意見交換を行いましょう。
顎変形症手術で失敗しないためのポイント|③経験豊富な医師のもとで治療を受ける
顎変形症手術で失敗しないためのポイントの3つ目は「経験豊富な医師のもとで治療を受ける」です。
顎変形症の手術は、精密検査の結果を元に、繊細な神経や周辺の筋肉に配慮しながら細かい治療を行います。
そのため、医師の技術力に左右される治療ともいわれています。
治療を受ける病院を決定する前に、在籍医師の症例件数や実際に担当した患者の症例写真を確認し、十分な技術力や経験量があるかどうかをチェックしましょう。
まとめ
顎変形症は上下の顎の骨が左右や前後にズレることで、顔の歪みや顎のしゃくれ、噛み合わせの違和感などを生じさせます。
顎変形症の治療方法は歯科矯正装置のみを使うケースと、歯科矯正治療と外科手術を組み合わせるケースの2種類があり、歯並びや骨格の状態、目指す仕上がりなどを配慮した上で総合的に判断します。
なお、重度の顎変形症と診断され、外科手術を伴なった顎変形症治療を行う場合は保険が適応になるケースもあります。
また、顎変形症の治療には一般的に3〜4年程度の期間がかかるといわれており、外科手術を行う場合は2〜4週間程度の入院が必要です。
手術を受けて「失敗した」と後悔しないためにも、医療機関選びを慎重に行い、十分な診察やカウンセリングを受けた上で治療を開始しましょう。
<参考>
土曜・日曜診療のAyaデンタルオフィス
形症とは? | 鶴木クリニック医科・歯科
一般社団法人 日本頭蓋顎顔面外科学会
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最終閲覧日は記事更新日と同日
この記事の監修者
歯科医師
髙橋 義充 先生
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