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2023/09/01
受け口の矯正治療を大人と子供で解説!受け口の原因、治療費用、保険は効く?
目次
受け口は、顔の骨格にまで影響を与えることのある歯並びです。
中には顎の先が長く伸びていたり前に突き出ていたりすることで「顎がしゃくれている」とコンプレックスを感じる人もいます。
受け口には様々な原因や治療法があり、子供と大人で治療法が異なります。
今回は受け口でお悩みの方に、受け口の症状、原因、子供と大人の受け口の治療法、費用、保険適用について詳しく解説します。
受け口とは?
受け口は、噛んだときに上の歯よりも下の歯や顎が前に出てしまう噛み合わせです。矯正歯科では「下顎前突」や「反対咬合」と呼ばれます。
通常は噛んだときに上の歯が下の歯を覆うように前に出ていますが、受け口は通常とは逆に噛んでいるのが特徴です。
顎の大きさや位置に問題のある骨格性の受け口と歯の生え方が原因の歯性の受け口があります。
受け口は、以下のような問題を抱えていることが多いです。
- 前歯で食べ物を噛みきれない
- 口呼吸になりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高い
- 下顎の位置がズレているため、正常咬合と比べて顎関節症のリスクが高い
- 舌の動きが悪いので「サ行」「タ行」が発音しにくい場合がある
- 口を閉じたときに周りの筋肉が緊張して、顎先に梅干しのようなシワができたり、口が「への字」になったりしやすい
見た目、発音、食べ物を食べる機能の全てに問題が起こりやすいため、歯科矯正治療で改善したい噛み合わせのひとつです。
受け口の6つの原因
受け口の原因は、以下のようなものが代表的です。
- 遺伝
- 歯の生え方
- 顎の成長の仕方
- 舌の形
- 呼吸の仕方
- その他の悪癖
どうして受け口になるのか、一つずつみていきましょう。
受け口の原因①|遺伝
受け口の原因の一つは遺伝です。顔の骨や筋肉の形、歯の大きさなどが遺伝して受け口になる可能性があります。
遺伝的に上顎が小さいと相対的に下顎の方が大きくなるので、受け口になりやすいです。
受け口の原因②|前歯の生え方
受け口になる原因の2つ目は、前歯の生え方です。
前歯が生えてくる時に何らかの理由で以下のような状態になると、受け口になる可能性があります。
- 噛んだ時に上の歯よりも下の歯が前に来る位置に生えた
- 下の歯が外側に向かって傾いて生えた
子供は6〜7歳くらいで下の前歯、7〜8歳くらいで上の前歯が永久歯に生え変わります。
この段階で前歯の噛み合わせが受け口になっている場合は、大人になっても受け口のままになってしまうことがあります。
受け口の原因③|顎の成長の仕方
受け口は、顎の成長の仕方からも影響を受けます。
上顎の成長が不十分か下顎の成長が著しい場合は、結果的に下顎が上顎よりも大きくなって受け口になることが多いです。
上下の顎の成長時期は異なります。上顎は5歳くらいで先に大きくなり、下顎は13歳くらいで上顎の大きさに合わせて大きくなるのが一般的です。
しかし、何らかの原因で上顎が小さいままだと、下顎だけが大きくなって受け口になる可能性があります。
上下顎の骨の大きさや形は遺伝も影響しますが、舌の癖や口呼吸などの後天的な原因で下顎だけが大きくなる場合もあります。
受け口の原因④|舌の形
舌が短い、舌の裏側の筋が短いなど、舌が上顎につかない形をしていると顎の成長に影響を与えて受け口になることがあります。
舌は、口を閉じたときに上顎を押し上げるようにくっついているのが理想です。
舌が上顎につくことで舌全体で上顎を押し広げる力が働き、上顎の成長が促されます。しかし、舌が上顎につかないと上顎が十分に成長しない可能性があるのです。
舌が上顎につけられない場合は、舌が下がって下顎を押し広げる力をかけます。そうすると下顎の成長が加速するので、受け口になるリスクが高くなります。
受け口の原因⑤|呼吸の仕方
口呼吸をしている人は上顎の成長不全が起こりやすく、受け口になりやすいです。
人間は鼻呼吸が基本ですが、鼻の機能が不十分だと口で呼吸して酸素を身体に取り入れようとします。
口呼吸をするためには、舌を下顎の方に押し下げて下顎を前に突き出すことで軌道を開くことになります。
そうすると、下顎が前に出た状態が定着して受け口となる可能性があります。
受け口の原因⑥|その他の悪癖
- 舌で下の前歯を押し出す癖
- 下顎を前に突き出す癖 など
このような癖があると、下顎が上顎よりも大きく成長したり下顎が前に出た状態が固定されたりして受け口になる可能性があります。
受け口の治療法
受け口の治療は年齢や受け口の状態によってアプローチが異なります。
受け口の治療法を子供と大人に分けて解説します。
子供の受け口の治療法
子供の受け口は、小児歯科矯正治療を行って改善します。
年齢や受け口の原因に応じて以下の装置を使い分け、上顎の成長促進、下顎の成長抑制、受け口になる悪癖の改善を図ります。
- 3〜10歳→プレオルソ、T4K など
- 3〜8歳→ムーシールド
- 6〜8歳→リンガルアーチ、リップバンパー
- 7〜10歳→上顎前方牽引装置
- 7〜11歳→インビザラインファースト
- 11〜18歳→チンキャップ
ただし、歯の生え変わりや顎の発育には個人差があるので、各装置の適応年齢は前後します。
子供の受け口は、成長期を利用して顎の発育をコントロールし、将来的な受け口の発生や悪化を予防することを目標として治療するのが一般的です。
大人の受け口の治療法
大人の受け口は、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で治します。
受け口を治すために下顎を引っ込めるスペースや顎の骨の大きさの調整が必要な場合は、抜歯や骨切り(外科矯正治療)を行います。
大人は成長期が終わり、顎の大きさや形、歯並びが完成しているので、子供の小児歯科矯正のように抜歯や骨切りをしないで受け口を治すことはできない可能性が高いです。
受け口は自力で治せる?
受け口は、成長期の子供であれば自力で治せる可能性があります。
しかし、成長期が終わって受け口が定着している大人は自力で治すことができません。
子供が自力で受け口を治せる可能性があるのは、
- 受け口を誘発する舌の癖の改善
- 鼻呼吸にするためのトレーニング
を行うことで、将来的に受け口になる要因を減らせる可能性があるからです。
ただし、受け口の原因は様々です。
自力で子供の時に受け口を治しても、下顎が成長する12〜16歳頃に下顎を前に突き出す癖や舌で下の前歯を押す癖などが現れると受け口になる可能性があります。
受け口の治療は原因に応じて適切な治療を選択する必要があります。
自力で不確実なことをするよりは、歯医者で専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
受け口の歯科矯正治療は何歳からするべき?
受け口の治療は、原因に応じて以下の時期から行うのがおすすめです。
- 骨格に問題のある受け口→治療の協力が得られるようになる3歳頃。できるだけ早いうちが望ましい。
- 歯の生え方問題のある受け口→6〜8歳頃
骨格的な受け口は成長と共に悪化することが多いため、受け口の傾向がみられたらできるだけ早いうちに歯科矯正治療を始めるのがおすすめです。
上下顎の成長が終わると顎の形や大きさを変えられなくなります。そうすると、受け口を治すために抜歯や骨切りが必要になる可能性が高くなります。
5〜8歳頃に受け口になっている場合は、上顎の成長不足が受け口の原因になっている可能性があります。
この場合は、上顎の成長が終わる10歳頃までに治療を開始するのが望ましいです。
受け口を歯科矯正治療で治す費用と期間
受け口を歯科矯正治療で治す費用相場と期間を子供と大人に分けて解説します。
子供の受け口の歯科矯正治療費用と期間
子供の受け口の歯科矯正治療の費用と期間の目安は以下の通りです。
- 子供の受け口の歯科矯正治療費用→約20〜80万円
- 子供の受け口の歯科矯正治療期間→約1年〜2年
受け口の治療を始める年齢や使用する装置によって異なります。
また、生えていない永久歯は小児歯科矯正治療でコントロールできないため、永久歯の歯並びは悪くなる可能性があります。
中高生で永久歯の歯科矯正治療をする場合、小児歯科矯正治療にかかる1〜2年の治療期間に加えて、さらに2年ほどの期間がかかります。
大人の受け口の歯科矯正治療費用と期間
大人の受け口の歯科矯正治療の費用と期間の目安は以下の通りです。
治療方法【見出し】 | 治療範囲【見出し】 | 費用【見出し】 | 期間【見出し】 |
ワイヤー矯正 | 部分矯正 | 約30万円以上 | 最短3ヶ月〜1年 |
全体矯正 | 約80〜120万円 | 約1年〜3年 | |
マウスピース矯正 | 部分矯正 | 約8万円以上 | 最短3ヶ月〜1年 |
全体矯正 | 約80〜100万円 | 約1年〜3年 | |
外科矯正治療 | 全体矯正
(※1) |
|
約2年〜3年6ヶ月 |
※1:部分矯正はできません。
※2:外科矯正治療の保険適用にはいくつかの条件があります。
大人の歯科矯正治療の費用や期間は、症例、治療範囲、使用する矯正器具、治療方法によって異なります。
受け口の歯科矯正治療は保険が効く?
受け口の歯科矯正治療は、保険が効くものと医療費控除の対象となるものがあります。
歯科矯正治療にかかる費用を少なくできる可能性があるので、治療の前に確認しておきましょう。
保険が効く受け口の歯科矯正治療
以下の条件に当てはまる受け口の場合は、保険適用にて歯科矯正治療が可能です。
①「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
②前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療
③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療
(出典:https://www.jos.gr.jp/facility)
保険適用で歯列矯正ができる歯科医院は限られています。条件の①、②は「歯科矯正診断料算定」、条件③は「顎口腔機能診断料算定」ができる歯科医院を受診する必要があります。
特に重度の受け口は「③顎変形症」に該当する可能性があるので、顎口腔機能診断料算定の医療機関を受診してみましょう。
該当する医療機関は、地方厚生局のHP(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/)から検索できます。
医療費控除の対象となる受け口の歯科矯正治療
医療費控除の対象となる受け口の歯科矯正治療は、以下の通りです。
- 顎の成長を促すための子供の歯科矯正治療
- 噛み合わせや滑舌などの機能的な問題を改善するための大人の歯科矯正治療
医療費控除とは、歯科矯正治療を自費で支払った後に確定申告で医療費控除の申請をすることで、所得税の還付と翌年の住民税の控除が受けられる制度です。
歯科矯正治療の費用は保険適用外となりますが、減税という形で受け口の歯科矯正治療費の実質負担を下げることができます。
医療費控除は扶養関係にある家族の所得が200万円以上ある人が、医療費控除の対象となる治療費用を年間10万円以上支払った場合(※)に申告できます。
顎変形症と診断されるような重度の受け口でなくても医療費控除なら受けられることがあるので、確定申告を忘れないようにしましょう。
※所得によって異なります。所得が200万円未満の場合は、所得の5%以上です。
まとめ
受け口は見た目、発音、食べ物を食べる機能の全てに影響が出る可能性があるため、歯科矯正治療で改善したい噛み合わせのひとつです。
顎変形症と診断されると保険適用にて歯科矯正治療が受けられるほか、医療費控除を申請することで費用負担を軽減できる可能性もあります。
受け口が気になる場合は、まずは歯科医院でカウンセリングを受けるのがおすすめです。
<参考>
受け口を治すには?原因や治療方法を解説! | hanaravi歯科矯正blog
受け口(下顎前突)の歯並び矯正治療| 東京都港区麻布十番のUC矯正歯科
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この記事の監修者
歯科医師
髙橋 義充 先生
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